こんにちは。きもの風雅 -Kimono & Me-のたくゆきです。
夏祭りや花火大会、あるいはちょっとしたお出かけなど、夏の楽しい思い出に欠かせないのが浴衣ですよね。華やかで涼しげな浴衣を着ると、それだけで背筋がすっと伸びて、特別な気分になれるものです。
でも、楽しかったお出かけから帰ってきた後、こんな悩みを抱えていませんか。着用後の浴衣を自宅で洗って大丈夫なのだろうか、もし縮んでしまったらどうしよう、色落ちして柄が台違いになったら嫌だな、といった不安です。毎回クリーニングに出すのも手間やお金がかかるし、かといって汗を吸った浴衣をそのままクローゼットにしまうわけにはいきませんよね。そのまま放置してしまうと、翌年には黄色いシミやカビが発生してしまう原因になりますよ。
実は、正しい知識と少しのコツさえ知っていれば、浴衣は自宅の洗濯機や手洗いで安全に、精度高く綺麗に洗うことができるんです。私自身、最初は失敗を恐れてクリーニング任せでしたが、自分で洗うようになってからは浴衣への愛着がさらに深まりましたし、いつでも清潔に保てるのでもっと気軽に浴衣を着られるようになりました。
そこで今回は、自宅でできる失敗しない浴衣の洗い方を徹底的に解説します。洗濯表示の正しい見極め方から、素材ごとの注意点、型崩れを防ぐたたみ方、手洗いと洗濯機の具体的な手順、鎖やシワを防ぐための最大のポイントである脱水や干し方まで、誰でも迷わず実践できるようにまとめましたよ。
お気に入りの浴衣をあなた自身の手で丁寧にお手入れして、次のシーズンも、その次も、ずっと美しい状態で袖を通せるようにしましょうね。
まずは今回の浴衣のお手入れにおいて、絶対に押さえておきたい重要ポイントを4つにまとめました。まずはこれだけでも覚えておいてくださいね。
- 洗濯表示を必ず確認して自宅で水洗いができる浴衣かどうかを最初に見極める
- 洗う前には必ず色落ちテストを行い他の柄への色移りや衣類への色移りを防ぐ
- 手洗いか洗濯機の弱水流コースを使い脱水時間は極めて短くしてシワの定着を防ぐ
- 直射日光を避けた風通しの良い日陰で陰干しをして完全に乾かしてから畳んで保管する
自宅で簡単にできる正しい浴衣の洗い方
お気に入りの浴衣を自宅で洗うのは、最初は少しドキドキするかもしれませんね。でも安心してください。手順を一つずつ確認しながら進めていけば、生地を傷めることなくすっきりと汗や汚れを落とすことができますよ。まずは、洗濯機や手洗いを始める前の大切な準備と確認のステップから、実際の洗い方までを詳しく解説していきますね。
洗濯表示で自宅で洗えるか確認する
浴衣を洗う前に、一番最初に行わなければならないのが「洗濯表示(ケアラベル)」の確認です。これを怠って感覚だけで洗ってしまうと、一発で浴衣がダメになってしまうこともあるので、絶対に省略しないでくださいね。浴衣の多くは襟の裏側や、下前の内側の縫い目などに白いタグが縫い付けられていますよ。
そのタグに描かれている「洗濯桶(タライ)」のマークをチェックしましょう。洗濯桶の中に数字が書いてあったり、波線が描かれていたりするマークがあれば、それは「家庭での水洗いが可能」というサインです。数字は使用できる水の温度の上限(例えば『30』なら30度以下)を示していて、桶の下に横線が引かれている場合は、水流の強さを弱くする必要がある(線が多いほど優しく洗う)ということを意味しています。手のひらが水に浸かっているような「手洗いマーク」の場合は、洗濯機ではなく手洗いで優しく洗う必要がありますよ。
一方で、洗濯桶のマークに大きな「×」印が重なっているマークがある場合は、残念ながら家庭での洗濯はできません。これは水洗い不可という意味なので、無理に自宅で洗おうとすると、生地が激しく縮んだり、型崩れして元に戻らなくなったり、染料が流れて柄がにじんでしまったりする可能性が非常に高いです。このマークがある場合は、自宅で洗うのは諦めて、着物専門のクリーニング店にお任せするのが一番確実で安全ですよ。まずは自分の浴衣のタグを引っ張り出して、どのマークが描かれているかじっくり観察してみてくださいね。新しい洗濯表示のマークの意味については、公的な情報を確認しておくと安心です(出典:消費者庁『新しい洗濯表示』)。
縮みや型崩れを防ぐ素材のチェック
洗濯表示の確認とあわせて、浴衣の「素材」や「加工」も確認しておきましょう。浴衣の素材によって、自宅で洗う際の難易度や注意点が大きく異なるからなんです。素材の表示も洗濯表示タグに一緒に書かれていることが多いですよ。
一般的な浴衣で最も多いのが「綿(コットン)100%」のものです。綿は肌触りが良く吸水性にも優れていますが、水に通すと縮みやすく、シワになりやすいという特徴があります。ですので、洗うときは優しい力加減が必要になります。次に多いのが「ポリエステル」などの化学繊維を使用した浴衣ですね。最近のポリエステル浴衣は非常に優秀で、吸汗速乾性に優れ、自宅で洗ってもほとんど縮まず、シワにもなりにくいので非常にお手入れが楽ちんです。また、麻(リネン)が混ざった「綿麻」の浴衣は、シャリ感があって涼しいですが、麻も水で縮みやすく手入れや取扱いに注意が必要なデリケートな素材なので、綿以上に優しい取り扱いが求められますよ。
そして、特に注意が必要なのが「絞り(しぼり)浴衣」です。絞り浴衣は生地に独特の立体的な凹凸(シボ)が施されているのが特徴ですが、これを水に浸して強く揉んだり、洗濯機で普通に洗ったりすると、せっかくの凹凸が伸びて平らになってしまい、浴衣の風合いが完全に失われてしまいます。また、絹(シルク)が混ざっている浴衣や、表面に金箔・銀箔などのラメ加工、豪華な刺繍、レースなどが施されている浴衣も、自宅での洗濯は避けた方が賢明です。摩擦によって箔が剥がれたり、刺繍の糸がほつれたりするリスクがあるからです。これらデリケートな素材や特殊な加工がある浴衣は、やはりプロのクリーニングへ出すことをおすすめします。浴衣の素材や状態に合わせたお手入れを心がけ、愛着のある一枚を守りましょうね。当サイトでは、麻素材の魅力について紹介した夏着物の麻の記事も公開していますので、ぜひ参考にしてみてくださいね。なお、クリーニングや修理にかかる具体的な費用については、店舗や浴衣の状態、素材によって大きく異なるため、正確な情報は各店舗の公式サイトをご確認いただくか、直接店舗へお問い合わせくださいね。

色落ちテストで洗濯トラブルを防ぐ
洗濯表示と素材がクリアできたら、次に必ず行ってほしいのが「色落ちテスト」です。特に、新しく買ったばかりの浴衣や、白地に紺色や赤色といった濃い色が大胆に染め抜かれているデザインの浴衣は、色落ちしやすい傾向がありますよ。色落ちテストをせずにいきなり洗ってしまうと、濃い色の染料が溶け出して、白い部分ににじんで染まってしまう「色泣き」という最悪のトラブルが起こることがあります。一度色泣きしてしまうと、自宅で修正するのはほぼ不可能な状態になってしまうんです。
色落ちテストの手順はとても簡単なので、面倒くさがらずにやってみてくださいね。まず、浴衣を洗うときに使用する予定の「おしゃれ着専用の中性洗剤」を準備します。その洗剤の原液を、綿棒や白い綺麗な布の端にほんの少しだけつけます。次に、浴衣の襟の裏側や、裾の折り返しの内側、内側の縫い代など、表からは見えない「目立たない部分」を選んでください。そこに、洗剤をつけた綿棒や布をあて、軽くトントンと数回叩くように押し当ててみましょう。
押し当てた綿棒や白い布の先に、浴衣の染料(生地の色)がじんわりと移っていないかを確認します。もし、白い布に少しでも浴衣の色がついてしまった場合は、その浴衣は水で洗うと染料が流れ出てしまうという証拠です。この場合は、自宅で洗うのは絶対に避けて、水を使わないドライクリーニングができるプロのクリーニング店に持ち込んでくださいね。逆に、しっかりと叩いても白い布に全く色が移らなければ、自宅で水洗いをしても色落ちするリスクは極めて低いと判断できます。このひと手間が、大切な浴衣を色移りから守る強力な防波堤になりますよ。
型崩れを防ぐ洗濯ネットとたたみ方
色落ちテストをクリアしたら、いよいよ洗濯の準備に入ります。浴衣をそのまま洗濯機に入れたり、ぐちゃぐちゃにしてたらいに浸したりするのは絶対にNGですよ。生地が摩擦で毛羽立ったり、縫い目が引っ張られて型崩れしたり、シワだらけになってしまいます。型崩れと摩擦を防ぐために、必ず「洗濯ネット」を使用し、浴衣を「洗濯用の形」にたたんでから洗うようにしましょう。
ここで登場するのが、和装の基本のたたみ方である「袖畳み(そでだたみ)」です。手洗いする場合でも洗濯機を使う場合でも、この袖畳みにして洗うのが鉄則ですよ。袖畳みのやり方は以下の通りです。
【洗濯用の袖畳みの手順】
1. 浴衣を平らなテーブルや畳の上にまっすぐ広げます。
2. 背中の中心にある縫い目(背中心)に沿って、左右をきれいに合わせるように縦半分に折ります。このとき、左右の袖も綺麗に重なるように重ね合わせます。
3. 重ね合わせた左右の袖を、身頃(胴体の部分)の上に折り返して重ねます。
4. 身頃の幅を、使用する洗濯ネットの幅に合わせて、縦方向に二つ折り、または三つ折りにします。
5. 最後に、浴衣の丈(長さ)を洗濯ネットの大きさに合わせて、二つ折り、または三つ折りにして、コンパクトな長方形にします。
たたみ終わったら、そのサイズにぴったりと合う洗濯ネットに入れます。ネットが大きすぎると、洗濯中に中で浴衣が動いてしまい、結局たたんだ形が崩れてシワだらけになってしまいますよ。ネットの中で浴衣が遊ばないよう、ジャストサイズのネットを選びましょう。また、ネットのファスナーは最後までしっかりと閉め、ファスナー the 引き手(スライダー)をゴムのカバーにきちんと収納しておくことも忘れないでくださいね。他の衣類やネットの生地と擦れて傷つくのを防いでくれますよ。ちなみに、浴衣のサイズが自分の体に合っていることもシワを防ぐために大切ですよ。詳しい測り方は当サイトの浴衣のサイズと正しい測り方の記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧くださいね。

優しく手洗いして生地の傷みを防ぐ
浴衣を最も傷めず、風合いを保ったまま綺麗にする方法が、この「手洗い(押し洗い)」です。洗濯機よりも力加減を細かく調整できるため、お気に入りの大切な浴衣や、綿麻などの少しデリケートな素材の浴衣は、ぜひ手洗いで洗ってあげてくださいね。少し手間に感じるかもしれませんが、実際にやってみると10分か15分程度で終わるので、思っているよりもずっと簡単ですよ。
まずは、浴衣がすっぽりと浸かる大きさの容器を準備します。洗面ボウルや、大きめのプラスチック製のたらい、あるいは浴室の浴槽を使うのが便利でおすすめですよ。そこに、常温の「水」をたっぷりと張ります。ここでの注意点は、決してお湯を使わないことです。お湯を使うと生地が縮みやすくなり、色落ちの危険性も一気に高まってしまいます。必ず30度以下の常温の水を使用してくださいね。そこに、おしゃれ着専用の中性洗剤を規定量入れ、手でよくかき混ぜて完全に溶かします。
洗剤液ができたら、洗濯ネットに入れたまま(または袖畳みにしたまま)の浴衣を静かに浸します。そして、上から手のひらで優しく「ギュッ、ギュッ」と押し、力を抜いて浴衣が自然に浮き上がってくるのを待ちます。この「押して、浮かせる」という押し洗いを20回から30回ほど繰り返してください。このとき、生地同士をゴシゴシと擦り合わせたり、力任せに揉んだりしてはいけません。摩擦で生地が毛羽立ったり、織り目がズレたりしてしまいますよ。
もし、襟元のファンデーション汚れや、袖口の皮脂汚れ、裾の泥はねなど、目立つ汚れがある場合は、洗濯ネットから出すかネット越しに、その部分体に薄めた中性洗剤液を直接つけ、指の腹で優しくなでるようにして汚れを浮き出させておきましょう。全体を押し洗いし終えたら、洗剤の入った水を捨て、浴衣を上から優しく押して水分を軽く出します。次に、綺麗な真水を張り、押し洗いの要領で優しく押しながらすすぎます。水を2〜3回入れ替えながら、泡が出なくなるまで丁寧にすすいでくださいね。最後は優しく押して水を切りましょう。ひねって絞るのは生地を極端に傷めるので厳禁ですよ。

洗濯機の手洗いコースで手軽に洗う
「手洗いをするまとまった時間がとれない」「力仕事は苦手だからもっと手軽に洗いたい」という方は、洗濯機を賢く活用しましょう。最近の洗濯機は非常に進化していて、デリケートな衣類を優しく洗い上げる優れたコースが搭載されているので、ポイントさえ押さえれば洗濯機でも失敗せずに綺麗に洗うことができますよ。
洗濯機を使う場合の最大のポイントは、使用するコースの選択と、単独洗いの徹底です。まず、先ほど説明した「袖畳み」にしてネットに入れた浴衣を洗濯槽に入します。このとき、浴衣は必ず「1着だけ」で洗うようにしてください。他の日常の洋服と一緒に洗ってしまうと、洗濯槽の中で絡み合って引っ張られたり、ボタンやファスナーと擦れて生地が傷ついたり、他の衣類から色移りしたりするリスクが高まります。少々もったいないと感じるかもしれませんが、大切な浴衣を守るためにも単独洗いを徹底してくださいね。
洗濯機にセットしたら、おしゃれ着専用の中性洗剤を投入します。そして、コース選択のボタンを押します。絶対に通常の「標準コース」で回してはいけません。標準コースの強い水流や長時間の攪拌は、浴衣にとっては強すぎて型崩れやシワの大きな原因になってしまいます。必ず「手洗いコース」「ドライコース」「おしゃれ着コース」「ソフトコース」など、洗濯機メーカーによって名称は異なりますが、水流が最も弱く、ドラムが優しく揺れるようなデリケート衣類用のコースを選んでください。全自動で洗いからすすぎまで優しく行ってくれるので、あとは洗濯機にお任せすれば大丈夫ですよ。ただし、最後の「脱水」の工程だけは、洗濯機に任せっきりにせず、自分でコントロールする必要があるので注意してくださいね。
脱水は短時間にしてシワを予防する
浴衣を自宅で洗うプロセスの中で、最も失敗しやすく、最も仕上がりに差が出る運命の分かれ道が、この「脱水」の工程です。手洗い派の人も、洗濯機派の人も、この脱水だけは特に集中して行ってくださいね。なぜなら、脱水時間を長くしすぎることこそが、乾いた後にアイロンをかけても消えないような強固なシワを作ってしまう最大の原因だからなんです。
洗濯機のデリケートコースの自動設定のまま脱水を最後までかけてしまうと、たいていの場合、脱水時間が長すぎて浴衣がカラカラに近い状態になり、脱水槽の壁面に強く押し付けられた形の深いシワが刻まれてしまいます。これを防ぐための黄金ルールは、脱水時間を「30秒から1分以内」に設定することです。洗濯機の設定で脱水時間を「1分」と手動で指定するか、手動設定ができない場合は、脱水が始まって洗濯槽の回転が本格的に速くなってから30秒から45秒ほど数えて、手動で「一時停止」ボタンを押して強制終了させてください。
ネットから浴衣を取り出したとき、「まだ水気が結構残っていて、少しズッシリと重みがあるな」と感じるくらいがベストな状態ですよ。水がポタポタと激しく滴り落ちない程度に余分な水分が抜けていれば十分です。この「少し水分が残っている重み」こそが非常に重要で、干したときに水の重みによって生地が下に引っ張られ、洗濯中についた細かいシワを自然に伸ばしてくれる「自重落下」の素晴らしい効果を発揮してくれるんです。水分を絞りきろうと欲張らず、少し濡れている状態で脱水を切り上げることが、アイロンがけを不要にする、あるいは格段に楽にするプロの極意ですよ。
美しく仕上げる浴衣の洗い方と保管のコツ
すっきりと洗い上がって軽く脱水した浴衣は、仕上げのひと手間と、その後の干し方・畳み方によって、次回着るときの美しさが劇的に変わってきますよ。糊付けの選択肢から、シワを一切残さない干し方のコツ、アイロンがけのポイント、および型崩れを防ぐ伝統的な保管方法まで、最後まで手を抜かずに見ていきましょうね。
洗濯のりでパリッと美しく仕上げる
脱水を終えた浴衣は、そのまま干しても自然な風合いで素敵ですが、もうワンランク上の美しい着姿を目指すなら「洗濯のり(糊付け)」を強くおすすめしますよ。洗濯のりを使用すると、生地に程よいハリとコシが生まれ、着たときに衿元がシャキッと立ち上がり、シワになりにくく美しいシルエットを長くキープできるようになります。さらに、のりの被膜が生地の表面をコーティングするため、汗や皮脂、食べこぼしなどの汚れが生地の繊維の奥深くに染み込むのを防ぐバリア効果もあるんです。これにより、次回洗うときに汚れが落ちやすくなるという嬉しいメリットもありますよ。
洗濯のりには大きく分けて「天然のり」と「合成のり」の2種類が存在します。それぞれの特徴を理解して使い分けることが大切です。
【洗濯のりの種類と使い分け】
・天然のり(デンプンのり):トウモロコシなどから作られる伝統的なのり。非常に硬くパリッとした伝統的な質感に仕上がりますが、湿気を吸いやすく、長期保管時に虫やカビを引き寄せる原因になりやすいため、シーズン終わりの長期保管前には使用を避けてくださいね。
・合成のり(PVA・PVAcなど):化学繊維などで作られた現代的なのり。しなやかで上品なハリに仕上がり、湿気にも強く、虫食いやカビのエサにならないため、シーズン終わりの洗濯や長期保管の前には必ずこちらの合成のりを選びましょう。
具体的なのり付けの手順をご紹介しますね。手洗いの場合、すすぎの最後の水に市販の液体合成のり(ハイドロハイターなどと並んで売られている洗濯用のり)を規定量溶かします。そこに、袖畳みにした浴衣を1〜2分ほど浸し、全体にのり液が行き渡るように上から優しく数回押します。その後、浴衣を取り出して軽く水気を絞るか、洗濯機で30秒ほど脱水をかけます。洗濯機で洗った場合は、柔軟剤の投入口に液体の合成のりを入れておくか、すすぎの最後のタイミングで直接投入すれば自動でのり付けが完了しますよ。
もっと手軽に行いたい場合は、洗濯時にはのり付けをせず、乾いた後にアイロンをかける際、市販の「スプレーのり(キーピングなど)」をシュッと吹きかけながらアイロンを当てる方法が一番簡単でおすすめです。衿元や袖口など、特にパリッとさせたい部分だけにピンポイントで使用できるので初心者でも失敗しませんよ。おしゃれ着洗剤の正しい使い方やのり付けのコツは洗剤メーカーのサイトでも紹介されています(出典:花王『エマールブランドサイト』)。なお、洗濯のりの使用や使用量については、各洗剤メーカーの取扱説明書を確認し、生地の縮みやシミがないか目立たない部分で試してから自己責任でご使用くださいね。
風通しの良い日陰で陰干しをする
脱水とのり付けが終わったら、次は「干す」工程です。ここでも絶対に守ってほしい鉄則があります。それは、直射日光を避けて「風通しの良い日陰で陰干し(かげぼし)にする」ということです。早く乾かしたいからといって、夏の強い日差しの下に浴衣を長時間さらしてしまうのは絶対に避けてくださいね。紫外線によって浴衣の美しい藍色や鮮やかな色彩が色あせてしまったり、生地の繊維が傷んでパサパサになってしまったりする原因になるからです。必ず、風がよく通り、直射日光の当たらない場所で干すようにしてくださいね。
また、干す際に使用するハンガーも非常に重要です。洋服用の一般的な三角ハンガーを使うのは避けてください。洋服用のハンガーは幅が狭いため、浴衣の袖の重みで肩の部分がボコッと突き出て型崩れしてしまいますし、袖がダラリと垂れ下がって深いシワが寄ってしまいます。浴衣を干すときは、左右の袖がまっすぐ一直線に伸びる「着物ハンガー(和装ハンガー)」を必ず使用しましょう。これを使うことで、浴衣本来の美しい形を保ったまま干すことができますよ。着物ハンガーがない場合は、突っ張り棒や物干し竿に直接袖を通して水平に干す方法でも代用可能です。
ハンガーに掛けたら、乾く前に必ず行う「魔法のシワ伸ばし」があります。浴衣の両手のひらで挟むようにして「パンパン」と叩き、全体のシワを優しく伸ばしていきます。特に、衿(えり)、袖口、おくみ線、脇の縫い目などを縦方向や横方向に軽く引っ張り、縫い目の縮みをピシッと整えておきましょう。この濡れている状態でのシワ伸ばしを丁寧に行っておくことで、乾いたときにはほとんどシワが目立たなくなり、面倒なアイロンがけの工程を完全にスキップできるか、あるいは驚くほど楽に終わらせることができるようになりますよ。ぜひ試してみてくださいね。

半乾きの状態でアイロンをかける
陰干しをして、浴衣が完全に乾ききる手前の「半乾き(生乾き)」の状態になったときが、最も綺麗にアイロンをかけられる絶好のタイミングです。生地に少し水分が残っている状態だと、アイロンの熱によってその水分が蒸発する際に、繊維のシワが一番スッと綺麗に伸びてくれるからなんですね。もし完全に乾いてしまった場合は、霧吹きを使って全体に均一に水をスプレーし、少し時間をおいて水分を生地に馴染ませてからアイロンをかけると良いですよ。
アイロンをかける際の重要なルールは、「温度設定」と「当て布(あてぬの)」の使用です。浴衣の素材に合わせて、アイロンの温度を正しく調整しましょう。綿100%の浴衣であれば「中温〜高温」でしっかりとシワを伸ばせますが、ポリエステルなどの化学繊維が含まれている場合は熱に非常に弱いため、必ず「低温〜中温」に設定してください。高温で直接当ててしまうと、生地が溶けてしまったり、縮んでテカテカになってしまったりすることがあります。また、どのような素材であっても、テカリや生地の傷みを防ぐために、薄手のハンカチや白い当て布を浴衣の上に載せ、その上からアイロンを当てるようにしてくださいね。特に、衿やおくみ線、袖口など、ピシッとさせたい目立つ部分から順にアイロンをかけていきましょう。
【注意!絞り浴衣へのアイロンは完全禁止】
伝統的な「絞り(しぼり)浴衣」には、絶対にアイロンを当ててはいけません。絞り浴衣の最大の魅力である立体的な凹凸(シボ)が、アイロンの熱と圧力によって押し潰され、ただの真っ平らな薄い生地になってしまいますよ。元に戻すことは非常に困難なので、絞り浴衣はアイロンがけをせず、干す際の丁寧な手伸ばしだけで仕上げるように徹底してくださいね。
アイロンを使用する際は、アイロン本体が高温になりますので、火傷や火災などの安全には十分に注意し、お子様やペットが近づかない安全な環境で行ってください。アイロンの使用に関する最終的なトラブル防止のため、各メーカーの取扱説明書を確認の上、自己責任で安全に行ってくださいね。
本だたみでシワを防いで保管する
アイロンがけが終わったら(あるいは干して綺麗にシワが伸びたら)、最後の仕上げとして、浴衣を伝統的な和装のたたみ方である「本だたみ(ほんだたみ)」にして保管しましょう。適当にたたんで洋服と同じようにタンスに押し込んでしまうと、せっかく綺麗に洗って伸ばした浴衣にまた不自然なシワがついてしまい、これまでの努力が台無しになってしまいますよ。本だたみは、浴衣の縫い目に沿って折るため、余計な折りジワがつかず、最もコンパクトで美しく保管できる優れた方法なんです。
本だたみの具体的な手順を順を追って説明しますね。
【浴衣の本だたみの手順】
1. 浴衣の衿を左側、裾(すそ)を右側にして、平らなテーブルや畳の上にまっすぐ広げます。
2. 手前側(自分側)の脇の縫い目(脇縫い)で折り、手前の身頃を内側に折ります。
3. おくみ縫い(衿の下から裾に伸びる縫い目)に沿って、おくみをこちら側に折り返します。
4. 衿をきれいに整え、向こう側の衿とおくみを、手前側のおくみにピッタリ重ね合わせます。
5. 向こう側の脇の縫い目を、手前側の脇の縫い目に重ねるようにして全体を半分に折ります。これで左右の身頃が綺麗に重なり合います。
6. 左右の袖を、それぞれ身頃の上に重ねるように折りたたみます。
7. 最後に、浴衣の丈の長さを二つ折り(または収納スペースに合わせて三つ折り)にします。
本だたみにした後は、湿気を防ぐために和装専用の「たとう紙(紙製の保管袋)」に包んで保管するのが最も理想的です。たとう紙は通気性が良く、余分な湿気を吸い取ってくれるため、カビの発生を強力に防いでくれますよ。洋服用のプラスチック製の衣装ケースに直接入れて保管するのは、湿気がこもりやすくカビや変色のリスクが高まるため避けた方が無難です。プラスチックケースを使う場合は、ケースの底に乾燥剤や防虫剤を敷き、たとう紙に包んだ状態で入れるように工夫してくださいね。防虫剤は浴衣の生地に直接触れないように置き、種類の異なる防虫剤を混ぜて使わないようにしましょう。化学反応でシミができることがありますよ。
正しい浴衣の洗い方でお気に入りを長持ち
ここまで、浴衣の洗濯前の確認から、手洗い・洗濯機での洗い方、脱水の極意、のり付けや干し方、アイロンがけ、そして最後の本だたみと保管方法まで、一連のお手入れの流れをご紹介してきました。一見すると工程が多くて大変そうに思えるかもしれませんが、それぞれのステップの理由とコツさえ掴んでしまえば、意外とシンプルで誰でも自宅で実践できることが分かっていただけたかと思います。
浴衣を洗う「頻度」についてですが、基本的には「汗を多くかく夏場は、1回着用するたびに洗う」のが生地を長持ちさせる理想的なペースです。汗に含まれる塩分や皮脂汚れは、目に見えなくても時間とともに生地を酸化させ、黄ばみやカビ、嫌なニオイの発生源になってしまいます。ただし、「夕方の涼しい時間帯に2時間だけ着た」「ほとんど汗をかいていない」という場合は、毎回洗わなくても大丈夫ですよ。その場合は、着用後すぐにタンスにしまわず、着物ハンガーにかけて風通しの良い日陰で半日から1日ほどしっかり干して湿気を飛ばしてくださいね。また、浴衣の下に透け対策や汗を吸い取るためのインナーを正しく着用することも、浴衣を長持ちさせる秘訣ですよ。メンズ向けですが、当サイトの浴衣インナーメンズの透け対策の記事で基本的な考え方を分かりやすく解説していますので、参考にしてみてくださいね。そして、夏のシーズンが終わり、来年まで長く保管する前には、必ず一度しっかりと洗濯するか、クリーニングに出して汚れを完全にリセットしてから保管するように徹底してくださいね。
自分で丁寧にお手入れをした浴衣は、クリーニングから返ってきたものとはまた違った、特別な愛着が湧くものです。「自分で綺麗にできた!」という充実感は、着物ライフをさらに楽しく、身近なものにしてくれますよ。あなたの大切なお気に入りの浴衣を、正しい洗い方でいつまでも美しく保ち、毎年の夏を素敵な和姿で彩ってくださいね。何かお手入れで不安な点や特殊な汚れがある場合は、無理をせず、信頼できる和装専門のクリーニング店やプロの職人にご相談することをお勧めします。正しいお手入れで、素敵な浴衣との時間を末永く楽しんでくださいね。








