こんにちは。きもの風雅 -Kimono & Me-のたくゆきです。
夏が近づくと、花火大会やお祭り、夕涼みなど、浴衣を着て出かけたくなるイベントがたくさんありますね。お店の街並みやネットショップには、色鮮やかで素敵なデザインの浴衣がたくさん並び、見ているだけでワクワクしてしまいます。
しかし、いざ浴衣を選ぼうとすると、「既製品の浴衣を買うのと、反物から仕立てる浴衣はどう違うのだろう?」と疑問に思ったことはありませんか。また、「自分の体にぴったり合う仕立て浴衣とはどのようなものなのか、お誂えは敷居が高そうだし、どれくらい費用がかかるのかわからない」と、一歩を踏み出せずに悩んでいる方もいらっしゃるかもしれません。
そこで今回は、仕立て浴衣既製品違いを分かりやすく比較しながら、オーダーメイドならではの魅力やメリット、仕立てにかかる費用相場、お誂えする際の注意点まで、余すところなくご紹介します。この記事を読めば、あなたにぴったりの浴衣を見つけるヒントが必ず見つかりますよ。お気に入りの一着を手に入れて、この夏を特別な思い出にしていきましょうね。
- 仕立て浴衣と既製品プレタ浴衣の決定的な違い
- マイサイズで仕立てることで得られる抜群の着心地と着崩れ防止効果
- お誂えの前に知っておきたい仕立て代の相場や水通しなどのオプション知識
- 浴衣を夏着物として着回すための本仕立ての選び方と採寸の流れ
仕立て浴衣とは既製品プレタ浴衣との違い
まずはじめに、お店でよく見かける「既製品(プレタ浴衣)」と、反物から作る「仕立て浴衣(お誂え)」の根本的な違いについて整理しておきましょう。この二つの違いをしっかりと理解しておくことで、あなたが浴衣に求めるこだわりや、どのようなシーンで着たいのかによって、どちらを選ぶべきかが明確になりますよ。既製品には既製品の手軽さがあり、仕立て浴衣には仕立て浴衣ならではの極上のフィット感があります。それぞれの特徴を細かく見ていきましょう。
自分だけのマイサイズで着る大きなメリット
仕立て浴衣の最大の魅力は、なんといっても自分の体型に合わせて作る「マイサイズ」であることですね。既製品の浴衣は、洋服と同じように「S・M・L」や「フリーサイズ」といった大まかなサイズ展開が一般的です。これは多くの人が着られるように、平均的な体型を基準にして作られているのですが、人間の体型は十人十色。身長は同じでも、肩幅が広い人、腕が長い人、ふくよかな人、スリムな人など、一人ひとり全く異なりますよね。特に着物の世界では、洋服以上に細かな寸法のバランスが全体の美しさを大きく左右するのですよ。
既製品を着たときに、「袖が短くてツンツルテンに見える」「身丈が長すぎておはしょりが余りすぎてお腹の周りがモコモコして太って見える」「胸元がすぐにパカパカとはだけてしまう」といった悩みを抱えたことはありませんか。これはすべて、寸法があなたの体型と合っていないことが原因なのです。仕立て浴衣であれば、あなたの身長、ヒップ、裄(手の長さ)などを細かく採寸し、それに合わせて生地をミリ単位で設計し裁断して仕立てます。そのため、袖丈や裄が絶妙な長さに収まり、前身頃の合わせもあなたの体型にピタッと重なるのです。
また、お誂えならではの利点として、なで肩やいかり肩、ふくよかな体型など、個々の体型の個性を和裁士が考慮して仕立てるため、洋服のように無理に体型補正をする必要がなくなります。洋服を着る感覚で、タオルを何重も腰に巻いて体型を寸胴にするという暑苦しい補正を最小限に抑えることができるため、夏場でも驚くほど涼しく、軽やかに過ごすことができるのですよ。自分自身の体に完璧に寄り添う浴衣を着たときのシルエットは、余分なたるみやシワがなく、後ろ姿から立ち姿まで、どこから見ても驚くほどシャープで美しく見えます。衿元がすっきりと決まり、背縫いが背中の真ん中にスッと通るその着姿は、周囲の人に「お、この人は着物をよく分かっているな」というとても洗練された印象を与えてくれるはずです。
- 裄(ゆき)が短すぎず長すぎず、手首が綺麗に見える位置に収まる
- 身丈が身長に合っているため、おはしょりの整理が非常に楽になる
- 前幅と後幅がヒップサイズに合わせて設計され、裾がすっきりと決まる
着崩れしにくく長時間着ても疲れない理由

浴衣を着てお出かけするときに、最も心配なのが「着崩れ」ではないでしょうか。歩いているうちに衿元がパカパカと開いてしまったり、裾がどんどん下がってきて地面に引きずりそうになったり。楽しみにしていた花火大会や夏祭りの途中で、着崩れを直すために何度もトイレに駆け込むのは本当に大変ですよね。せっかくの楽しい時間が台無しになってしまいます。実は、この着崩れの最大の原因は、自分の体型に合っていないサイズであることなのです。
体に合わない既製品を着る場合、余った生地を強引に内側に折り込んだり、足りない部分をカバーするために腰紐を通常よりもきつく締めたりする必要があります。しかし、無理に力づくで抑えているため、歩く、座る、腕を動かすといった日常の動作をするうちに生地が引っ張られ、どうしても崩れてきてしまうのです。その点、仕立て浴衣は余分な布の余りが一切ありません。余分な生地がないということは、腰紐や伊達締めを必要以上にギューギューと強く締める必要がないということです。優しく体に巻きつけるだけで自然とフィットし、歩いたり、座ったりといった日常の動作をしても、生地が余計に引っ張られることなく美しい形をキープし続けてくれます。
また、既製品でよくある「布のたるみを整理する」という無駄な工程が一切不要になるため、着付けそのものの時間も劇的に短縮されます。慣れてくれば、わずか10分足らずで美しく着こなすことができるようになりますよ。結果として、胸元や腰回りの圧迫感が格段に少なくなり、長時間着て歩き回っても驚くほど体が楽で、疲れにくいという素晴らしいメリットが得られるのですよ。浴衣を着るとすぐに疲れてしまう、着るのが少し苦手だったという方にこそ、この仕立て浴衣の快適さをぜひ体験してほしいなと思います。着崩れの心配をせずに、大切な人との特別な時間を心から満喫できるようになりますよ。
仕立てに必要な期間と注文のベストタイミング
仕立て浴衣を選ぶ上で、事前に知っておくべき重要なポイントが「納期」です。既製品であれば、お店で気に入ったものを購入してその日のうちに持ち帰って着用できますが、お誂えの場合は反物を選んでから職人(和裁士)が手作業で仕立てるため、どうしても一定の時間がかかります。一般的に、仕立てにかかる期間は約3週間から1ヶ月半程度が目安となっていますが、時期によってこの期間は大きく変動するのですよ。
ここで特に気をつけたいのが、浴衣のシーズンである夏場の混雑です。ゴールデンウィークを過ぎた5月中旬から8月にかけては、全国から仕立ての注文が一宝に呉服店や和裁所に集中します。このピーク時期に注文してしまうと、仕立て期間が「2ヶ月待ち」や「お盆明けの納品」になってしまい、着たかった花火大会やイベントに間に合わなくなってしまった……という悲しい失敗が起こりかねません。そのため、お誂え浴衣を着るためのベストタイミングは、まだ肌寒さが残る3月下旬から5月上旬頃です。
この時期であれば、和裁所も比較的落ち着いているため、丁寧かつスムーズに仕立ててもらうことができますし、人気の新作反物も豊富に出揃っているため、妥協せずにお気に入りの柄を選ぶことができますよ。さらに、春先は呉服店の店頭に最新の浴衣反物が最も豊富に揃う時期でもあります。その年のトレンドカラーや、新しい織り方の生地、伝統的な染め柄の復刻など、魅力的なラインナップを一番早く見ることができる特等席のような期間なのです。ゆっくりとお店のスタッフと相談しながら反物を選べるため、贅沢な時間を過ごすことができます。「夏に着る浴衣は、春から準備を始める」というスケジュール感を頭の片隅に置いておくと、焦らずに準備が進められるので非常におすすめです。
職人の手縫い仕立てとミシン縫いの違い

お誂えの浴衣をオーダーする際、仕立ての工法として「手縫い仕立て」と「ミシン仕立て」のどちらかを選択することがあります。どちらにも異なる利点があるため、あなたの用途や予算に合わせて選ぶのが良いでしょう。ここではそれぞれの具体的な違いとメリットについて解説します。
手縫い仕立ては、熟練の和裁士が一針ずつ丁寧に糸を通して縫い上げる伝統的な方法です。和裁の手縫いは、ミシン縫いのように完全に固定して縫い合わせるのではなく、あえて糸に微細な「ゆとり(遊び)」を持たせて縫います。この微小なゆとりがあるおかげで、生地が体の動きに合わせてしなやかに伸縮し、座ったりかがんだりしたときに突っ張ることなく、体に優しく馴染んでくれるのです。また、手縫いには「後から解いてサイズを直せる(仕立て替え)」という強みもあります。お気に入りの浴衣を、数年後に体型が変わったからと仕立て直したり、子供や孫に譲るために縫い直したりすることが可能になります。大切にメンテナンスすれば、まさに「一生もの」の衣類になるのですね。さらに、手縫いの縫い目は表に糸がほとんど出ないため、仕上がりがとても上品で高級感があるのも特徴です。万が一、着用中にどこかに引っ掛けて強い負荷がかかった場合でも、手縫い糸が先に切れることで、大切な反物自体の生地が裂けてしまうのを防ぐという素晴らしい知恵も詰まっています。大人のための極上の一着を仕立てる「手縫い仕立て」は、確かな技術を持つ和裁士(技能検定制度の合格者である和裁技能士など)によって支えられています(出典:厚生労働省『技能検定制度ポータルサイト「技のとびら」』)。
一方のミシン仕立ては、専用のミシンを用いて直線的に素早く縫製する方法です。機械でしっかりと縫い合わせるため、縫い目自体の強度が非常に高く、洗濯機での手洗いモードなどでガシガシ洗ってもほつれにくいという安心感があります。仕立てにかかる期間も手縫いに比べて短く、仕立て費用を大幅に抑えられる点が大きな魅力です。ただし、ミシン仕立ての場合、ミシン糸の張力が強いため、生地が水を通した際に縫い目部分が波打つように縮んでしまう(パッカリング現象)が生じることがあります。また、糸を解いて仕立て直すことが難しいため、一世代限りの使い切りになることが多いです。着心地と将来的な仕立て替えを最優先したい方は手縫いを、耐久性とコストパフォーマンス、お手入れのしやすさを重視したい方はミシン仕立てを選ぶと失敗がないでしょう。
- 手縫い:伸縮性があり抜群の着心地、仕立て直しが可能。大人の上質な一枚向け。
- ミシン:縫製強度が非常に強くお洗濯に強い、仕立て代が安い。アクティブな着用向け。
浴衣の仕立て代と反物代を合わせた予算相場
仕立て浴衣を注文するにあたって、一番気になるのがやはり「具体的な費用」ですよね。お誂えの浴衣は、一般的に「反物(生地)の代金」と「お仕立て代(技術料)」の2つの合計金額が総額になります。既製品のようにタグに書かれた価格だけで判断できないため、少し不安に感じることもあるかもしれません。大体の目安となる予算相場を把握しておきましょう。
まず反物代ですが、こちらはピンからキリまであります。一般的な綿コーマ地やポリエステル素材の反物であれば10,000円〜20,000円程度から手に入ります。一方で、伝統的な技法で染められた「有松絞り」や高級ブランド「竺仙」の綿紅梅、麻が混ざった小千谷ちぢみなどの上質なものになると、30,000円〜60,000円以上、高いものでは10万円を超える反物もあります。次にお仕立て代の相場ですが、ミシン仕立てであれば約8,000円〜12,000円、手縫い仕立てであれば約15,000円〜25,000円程度が一般的です。これらを合わせると、お誂え浴衣の最低予算は約25,000円前後からとなり、少し上質な生地を選んだ場合は40,000円〜60,000円程度が一般的なボリュームゾーンになりますよ。
特に有松絞りのような生地は、職人が一粒ずつ糸で括って染めるために数ヶ月から1年以上の歳月がかかる大変希少なものです。その絞りの凹凸を潰さないように慎重に巾出し(生地を伸ばして整える作業)を行い、手縫いで細かく縫い合わせる必要があるため、仕立て代が通常より数千円〜1万円程度高くなる傾向があります。しかし、それだけのストーリーと職人の情熱が詰まった特別な一枚は、袖を通すたびに豊かな気持ちにさせてくれますよ。例えば、400年以上の歴史を持つ伝統的工芸品である「有松・鳴海絞り」などは、地域団体商標としても登録され、国が認める確かなブランド価値を持っています(出典:特許庁『地域団体商標登録「有松鳴海絞」』)。
最近人気の高まっている東レの「セオアルファ」に代表される高機能ポリエステル素材の浴衣についてもお誂えの予算に含めて考えてみても良いかもしれませんね。セオアルファの反物代は30,000円〜45,000円程度で、手縫いやミシン仕立てを含めると総額50,000円〜60,000円前後になります. シワになりにくく、サラサラとした肌触りで吸汗速乾性に優れているため、お手入れが簡単で夏着物風の着回しにも非常に適していますよ。浴衣の素材ごとの特徴や、夏の暑さを乗り切るための涼しい生地の比較については、こちらの記事(浴衣の涼しい素材を徹底比較!夏を快適にするおすすめ生地)で分かりやすくまとめていますよ。もちろん、これらはあくまで一般的な市場価格を基にした目安であり、店舗のキャンペーンや依頼する和裁所、選ぶ素材によって変動します。最終的な判断や正確な費用については、購入・依頼を検討されている店舗 of 公式サイトをご確認いただくか、直接専門家やお店のスタッフにご相談くださいね。
仕立て浴衣とはお誂え前に知りたい注意点
仕立て浴衣の素晴らしい魅力についてお伝えしてきましたが、実際に反物を選んで仕立てを依頼する前に、あらかじめ知っておくべき重要な注意点やオプション加工がいくつかあります。これらの知識がないまま仕立ててしまうと、最初のお洗濯で驚くほど縮んで着られなくなってしまったり、インナーが透けて困ってしまったりといったトラブルに繋がることがあります。初めてのお誂えで絶対に後悔しないために、事前にチェックしておくべきポイントを一つずつ詳しく解説していきますね。
綿や麻の縮みを防ぐ水通しと色止めの必要性
浴衣の多くは、綿(コットン)や麻(リネン)といった天然繊維で織られています。これらの天然素材には、水に濡れると繊維がキュッと収縮するという性質があります。特に新しく織られた反物は、糸に一定の張力(テンション)がかかった状態で巻かれているため、初めて水を含んだときに最も大きく縮みやすいのです。もし、この縮む性質を考慮せずにそのまま仕立ててしまうと、初めて自宅でお洗濯をした際に、身丈や袖丈が数センチメートルも縮んでしまい、せっかくのマイサイズが台無しになってしまいます。身丈が5センチメートルも縮むと、おはしょりが全く作れなくなってしまうこともあるのですよ。
このトラブルを防ぐために行うのが、仕立て前の「水通し(みずとおし)」です。水通しとは、反物を仕立てる前に一晩たっぷりの水に浸してあらかじめ限界まで縮ませ、その後、陰干しをして半乾きの状態でアイロンを当てて生地のゆがみを整える(地直し)作業のことです。この地直しによって、縦糸と横糸が直角に交わる美しい状態に戻り、裁断の狂いも防ぐことができます。自分で家庭で行うことも不可能ではありませんが、大きな反物を均一に濡らして干し、ゆがみを矯正する作業は非常に高度な技術を要します。そのため、呉服店や専門 of 加工業者にお任せするのが最も安心ですよ。プロの手による水通しは、湯のしやテンターといった機械を使って均一に仕上げてくれるため、仕立て上がりの美しさが一段と違うのですね。また、濃い色(濃紺や黒、藍染めなど)の浴衣の場合は、最初の洗濯で余分な染料が流れ出て他の衣類を汚したり、着用中に汗で帯や下着に色が移ったりするのを防ぐための「色止め」加工も同時に行われます。水通しと色止めは、店舗によって3,000円〜5,000円程度のオプション料金がかかる場合が多いですが、浴衣を長く綺麗に愛用するためには、絶対に省略してはいけない必須の加工プロセスと言えますね。なお、自宅でのお洗濯方法やシワにならない干し方など、日頃のお手入れの具体的な手順については、こちらの記事(浴衣は洗濯機で洗っても大丈夫?正しい洗い方と干し方)にまとめていますので、ぜひ併せてチェックしてみてくださいね。
透け防止と生地の裂け防止に役立つ居敷当

仕立て浴衣をオーダーする際、もう一つよく耳にするのが「居敷当(いしきあて)」を取り付けるかどうかという選択肢です。居敷当とは、浴衣の後身頃(特にお尻から太もも、ふくらはぎのあたり)の裏側に縫い付ける、補強用および透け防止用の白いあて布のことです。特に夏の衣類である浴衣は、涼しく快適に過ごせるように薄手で通気性の良い生地が多く使われています。そのため、天気の良い屋外や太陽の光が当たる場所では、下着の色やライン、脚の輪郭がシルエットとして透けて見えてしまうことがよくあるのです。
居敷当をお尻周りに付けておくことで、下着が透ける心配を大幅に軽減でき、お出かけ中の「透けていないかな……」という不安から解放されますよ。さらに、居敷当にはもう一つの重要な役割があります。それは「生地と縫い目の補強」です。浴衣を着て立ったり座ったり、駅の階段を上り下りしたりするとき、あるいは車や自転車に乗る際など、生地が引っ張られて最も強い負荷がかかるのがお尻の真ん中を通る縫い目(背縫い)です。何度も強い力が加わると、縫い目の穴が広がってしまったり、最悪の場合は生地がピリッと裂けてしまったりすることがあります。お尻の裏側に当て布があることで、この負荷がうまく分散され、縫い目の傷みや破れを防いで浴衣の寿命を劇的に伸ばしてくれます。
居敷当の形状には、お尻の極一部だけをカバーする「小座布団」のような簡易的なものから、背縫い全体と後身頃全体を腰から裾まで覆う「ロングサイズ」まであります。ロングサイズの居敷当を付けると、階段を上る時や風が吹いたときに、足元の生地が足にまとわりつくのを防ぎ、歩き姿が格段に美しくなるという素晴らしいメリットもあるのですよ。布が二重になるため「少し暑くなるのでは?」と心配される方もいますが、最近は通気性に優れた薄手の綿布や東レのシルックなどの接触冷感メッシュ素材の居敷当も選べるようになっています。長持ちさせたいお気に入りの一枚には、ぜひ居敷当を付けることをおすすめしますよ。特に白地や淡い色の反物を選ぶ場合は必須のオプションと言えますね。
本仕立てと寝巻き仕立ての違いと選び方
浴衣をお誂えする際に、意外と見落としがちなのが「仕立て方のスタイル」です。浴衣の縫製には、大きく分けて「本仕立て(お出かけ用仕立て)」と「寝巻き仕立て(簡易仕立て)」の二種類が存在します。これらは用途が全く異なるため、お出かけ用の浴衣として着用したいのであれば、必ず本仕立てを選ぶ必要があります。
本仕立ては、お祭りや街歩きなど、お出かけ着として美しく装うための伝統的な和裁の仕様です。衿元には「衿芯」を通すための衿裏が作られており、前身頃の重なり部分である「おくみ」がしっかりと取られています。このおくみがあることで、歩いたり座ったりしても前が簡単にはだけにくく、胸元から裾にかけて立体的な美しいラインが生まれます。また、衿が綺麗に抜ける(首の後ろに適度な空間ができる)のも本仕立ての特徴で、衿元からうなじにかけて女性らしい上品で涼しげな後ろ姿を演出できるのです。身丈にも余裕を持たせて仕立てるため、おおはしょりを綺麗に整えて美しく着こなすことができます。
浴衣では通常「バチ衿」という、最初から半分に折られた幅の衿で仕立てるのが一般的ですが、夏着物としても着回すことを想定して「広衿(ひろえり)」という、折らずに広い状態の衿で仕立て、着用時に好みの幅に折って長襦袢の半衿と綺麗に合わせるという上級者向けのテクニックを選択することもできます。これもお誂えならではのこだわりですね。
一方の寝巻き仕立ては、温泉旅館の客室やホテル、自宅でのパジャマ用として、簡単に着脱できるように作られた簡易的な仕様です。おくみがなく、袖口が細い筒状(筒袖)になっており、身幅もゆったりとしていて前を重ねて帯を結ぶだけで誰でもすぐに着用できます。しかし、これはあくまで「室内用の寝具」としての設計です。そのため、寝巻き仕立ての浴衣を着て外へお出かけしてしまうと、周囲から「寝巻き姿(パジャマ)で街を歩いている」ように見えてしまい、非常に恥ずかしい思いをすることになってしまいます。また、寝巻き仕立ての浴衣にはおはしょりを作るための身丈の長さがそもそも用意されていないことが多いため、お出かけ用の着付け自体が不可能です。ネット通販などで安価な仕立てオプションを選択する際は、それが「お出かけ用の本仕立て」であることを必ず確認してくださいね。
長襦袢と足袋を合わせて夏着物として着る

お誂えで上質な仕立て浴衣を手に入れたら、ぜひ挑戦していただきたいのが、浴衣を「夏着物(なつきもの)」風に着こなすというワンランク上のスタイルです。既製品の安価な浴衣や大柄なプリント柄の浴衣だと少し難しいのですが、手縫いで丁寧に仕立てられた上質な浴衣(綿紅梅、しじら織り、小千谷ちぢみ、綿麻素材など)は、生地自体に豊かな表情と高級感があるため、着物としての風格を十分に備えています。
具体的な着方としては、浴衣の下に「長襦袢」または衿だけが付いた「半襦袢」を着用し、衿元から白い「半衿(はんえり)」を少しのぞかせます。そして、足元にはサンダルや素足の下駄ではなく、白い「足袋(たび)」を履いて草履を合わせます。たったこれだけの工夫で、浴衣が涼しげなカジュアル着物(単衣の夏着物)へと劇的に変化するのですよ。この着こなしの最大のメリットは、着用できる期間と場所が大きく広がることです。通常の素肌に着る浴衣は、7月と8月の盛夏、しかも夕方からのお祭りがメインですが、夏着物風に装うことで、5月下旬・6月の少し汗ばむ季節から、残暑が厳しい9月中旬頃まで、昼間のお出かけ着として着用可能になります。
インナーには麻や本麻の襦袢、高島ちぢみなどの吸汗速乾性に優れた和装スリップを着用すると、長襦袢を重ねても驚くほど涼しく快適に過ごせますよ。お祭りだけでなく、おしゃれなカフェでのランチや美術館巡り、歌舞伎や舞台 of 観劇、ホテルのアフタヌーンティーなど、大人の落ち着いたお出かけシーンでも全く浮くことなく、浴衣とは思えないほど凛とした美しさを放つことができますよ。博多織の半幅帯や麻の名古屋帯を合わせ、三分紐に帯留めを添えれば、さらに洗練された印象になります。足元も、浴衣用の塗り下駄ではなく、畳表の下駄やコルク芯の夏草履を合わせることで、さらにクラス感がアップしますよ。一着の浴衣が、何倍もの価値を持って活躍してくれる素晴らしい着こなし術ですね。
また、夏着物風に着こなす際には、髪型やバッグなどの小物選びにも少しこだわってみてくださいね。浴衣のときはカジュアルな巾着袋やカゴバッグを合わせることが多いですが、夏着物風にするなら、少し上品な利休バッグや、麻や竹籠のシンプルフラットなバッグを合わせると、全体のコーディネートがグッと引き締まって大人っぽく見えますよ。ヘアスタイルも、ルーズにまとめるよりは、少しタイトで艶感のあるアップスタイルにすると、衿元の半衿やうなじの美しさが際立ちます。ぜひ、お気に入りの和装小物と組み合わせて、上品なトータルコーディネートを楽しんでみてくださいね。
自分で測ることもできるお誂えの採寸方法
「仕立て浴衣を作ってみたいけれど、近くに呉服店がない」「呉服店のお店に入るのは緊張するし、敷居が高く感じてしまう」という方も少なくないかと思います。最近では、全国の有名着物店やネットショップでも、反物と仕立てがセットになったお誂えサービスをオンラインで手軽に申し込めるようになっています。その際に必要となるのが、自分の体のサイズ(寸法)ですね。
呉服店の店頭であればスタッフが数分で計測してくれますが、実は自宅で自分自身で測ることもそれほど難しくはありません。お誂え浴衣を仕立てるために必要な最小限の寸法は、次の3つです。
1. 身長:身丈(浴衣の長さ)の基準となる、最も基本的なサイズです。
2. ヒップ(腰回り):お尻の最もボリュームがある部分を、床と平行になるようにメジャーを回して測ります。このヒップサイズを基にして、浴衣の前身頃と後身頃の幅(前幅・後幅)を和裁士が割り出し計算します。これにより、裾がはだけず美しく包み込む幅が決定します。洋服のサイズ感覚ではなく、実寸を正確に測ることがポイントですよ。
3. 裄(ゆき):手の長さのことです。首の後ろの付け根にあるぐりぐりした骨(大椎穴)から、肩のトップを通り、腕を斜め45度に自然に下ろした状態で手首のくるぶし(外側の骨)までの長さを測ります。メジャーを体に沿わせて測る必要があるため、この部分だけはご家族やご友人に手伝ってもらうと、正確でブレのないサイズが測定できますよ。腕を真横に上げたり、真下に下ろしたりすると寸法が変わってしまうので、必ず斜め45度を保つようにしてくださいね。
裄の測り方において、お誂えならではのこだわりとして、「少し若々しく軽快に着たい場合は裄を通常より1〜2センチメートル短めに仕立て、エレガントで落ち着いた大人っぽい雰囲気を出したい場合は裄を1〜2センチメートル長めに仕立てる」といった微調整の指示を出すことも可能です。より詳細な身丈や裄の具体的な測り方のステップやコツについては、こちらの記事(失敗しない浴衣のサイズ選び!身丈と裄丈の測り方と簡単計算)で詳しく図解入りで解説していますので、セルフ採寸の参考にしてみてくださいね。この3つのサイズが分かれば、専門の和裁士が割り出し表を用いて、あなたの体型に最も適した各部位の寸法を完璧に算出できます。また、どうしても測るのが不安な場合は、手持ち of 着物や「以前着てみて一番着やすかった浴衣」をそのまま店舗に郵送し、同じ寸法で仕立ててもらうという方法も確実でおすすめですよ。あまり難しく捉えず、気軽にチャレンジしてみてくださいね。
自分に合う仕立て浴衣とは一生ものの出会い
ここまで、仕立て浴衣の基本から既製品との違い、具体的な費用相場や注意点まで詳しくご紹介してきました。仕立て浴衣は、既製品に比べると完成までに時間がかかり、初期費用も高くなります。そのため、最初は少しハードルが高く感じられるかもしれません。しかし、自分の体型に合わせて丁寧に作られたマイサイズの浴衣には、それを補って余りあるほどの計り知れない価値がありますよ。
初めてお誂えの浴衣に袖を通した瞬間、その軽やかさと、体に優しく吸い付くような抜群のフィット感に、きっと驚かれることでしょう。余分な生地のたるみがなく、すっきりと決まる着姿は、自分自身に大きな自信と心のゆとりを与えてくれます。着崩れの心配を一切せずに、大切な人との花火大会や夏の散策を心から楽しめる時間こそが、お誂えがもたらしてくれる最大のギフトなのかもしれませんね。
また、職人の手縫いで仕立てられた浴衣は、丁寧にお手入れをして風を通し、たとう紙に包んで大切に保管すれば、何年、何十年と着続けられる「一生もの」になります。着用後に自分で「本だたみ」をする静かな時間や、次のシーズンに向けてタンスを整理する瞬間も、日本の伝統的な丁寧な暮らしならではの豊かなひとときです。年齢を重ねて好みが変わったら帯や小物を変えて雰囲気をガラリと変えて楽しんだり、仕立て直して次の世代へと受け継いだりする楽しみもあります。浴衣を着ることで、いつもの見慣れた街並みがまるで旅先のような「非日常」に感じられる魔法を体験できます。背筋がスッと伸びて歩幅が小さくなり、いつもよりゆっくりとした時の流れを感じられる。そんな贅沢な時間を、仕立て浴衣は運んできてくれるのですね。今年の夏は、ぜひあなたを最高に輝かせてくれる特別な仕立て浴衣と出会い、着物でつなぐ、日常と非日常の素敵なひとときを心ゆくまで楽しんでくださいね。







